リアリズムの前衛/美術の証言

国家のために命を賭す覚悟で予科練に入った少年は特攻隊の訓練を受けますが、出撃する間もなく終戦を迎えます。戦後に師範学校に入学するも、下士官以上だったものは教職に就くのを禁ずるGHQの命令により、やむなく退学。戦争によって、日本、アメリカといった「国家」に翻弄された池田龍雄氏は、芸術による自立と自由の道に踏み出します。「新しい」リアリズムを求め、立川や内灘の米軍基地を実際に訪れ、そこに暮らす人々の取材とスケッチを元に描いたルポルタージュ絵画、ペン画で描く化物の系譜、早くても5800億年後にしか完成しない「梵天の塔」や、美術評論家の滝口修造宅の庭で生るオリーブの実で浅間山を囲む「ASARAT橄欖環計画」といったコンセプチュアルなパフォーマンス、「楕円幻想」「BRAHMAN」「場の位相」といった連作作品を発表するとともに、自らの義務として戦争体験を語り継いでいます。池田龍雄氏が芸術を志し制作するその根源には戦争への抵抗があるのです。

今回は、岡本太郎、花田清輝らの立ち上げたアヴァンギャルド芸術研究会を起点として、人民芸術集団、青年美術家連合など、池田龍雄氏が数多くの集団/運動に関わった40年代後半~1960年前半を中心に芸術運動と社会運動の経緯と可能性を、美術評論家で敗戦後日本前衛美術を研究する宮田徹也氏と共にレクチャーします。

日 時:2017年9月10日(日)16:00~18:30/15:30 Open
場 所:素人の乱12号店|自由芸術大学
杉並区高円寺北3丁目8-12 フデノビル2F 奥の部屋
資料代:500円+投げ銭(ワンドリンクオーダー)

【池田龍雄】佐賀県伊万里市に生まれる。15歳で海軍航空隊に入隊、特攻隊員として17歳で敗戦を迎える。昭和23年(1948)に上京し多摩造形芸術専門学校(現多摩美術大学)に入学。岡本太郎らの「アヴァンギャルド芸術研究会」に参加し前衛作家としてデビュー。以降、絵画制作やパフォーマンスなどを行うとともに執筆や講演など多方面で活躍。

【宮田徹也】日本近代美術思想史研究。岡倉覚三、宮川寅雄、針生一郎を経て敗戦後日本前衛美術に到達。ダンス、舞踏、音楽、デザイン、映像、文学、哲学、批評、研究、思想を交錯しながら文化の【現在】を探る。京都嵯峨美術大学客員教授。